INABU BASE

PROJECT

愛知のチベット「稲武」始まる働き方革命

我々の目指すもの、共に目指したいもの

イナブベースプロジェクト簡易ロゴ

2019.6.9 vol.9

自転車がもたらす価値

トヨタケ工業株式会社

横田 幸史朗

3月24日に行われたI.B.P.(INABU BASE PROJECT)成果報告会は成功裏に終わり、定員を超える多様な方にご参加いただきました。3月に発売になり当プロジェクトもご紹介いただいた書籍「新・働く理由」の著者:戸田智弘氏も会場に駆けつけてくれ、I.B.P.の成果報告と合わせて、スタートを切る4名の華々しいお披露目の場となりました。OPEN INABUのプロボノとして稲武での働き方に関心をもってくれた方々と、マウンテンバイクを中心としたI.B.P.メンバーとが一堂に会するよい機会であったかと思います。実際、会場でこれだけの多くの方が関心を持っていただけていることは、プロジェクトにとっても大変幸せなことだなと感謝の気持ちでいっぱいでした。

2019年3月24日開催 成果報告会&3周年記念パーティー「I.B.P. Kickoff Party」

「週3日×2日のパラレルワーク」のイメージ

会場でも紹介した4人(当日は一人欠席でしたが)は現在「週3日×2日のパラレルワーク」の実践に向け、ここ稲武へ移住して頑張ってくれています。稲武の事業所での業務と並行して、地域のフィールド活用となるマウンテンバイクでのツアーガイドの事業化を目指して。具体的には標高1,200mの最高の景色、自然の中にて親子でマウンテンバイクに思いっきり乗れるコースづくりを進めています。コアなマウンテンバイクファンだけでなく、きっと多くの大人たちが気持ちよくその価値を認めてくれるでしょう。その様な未来をイメージできるからか彼らの動きは積極的で、そこに誰の指示も存在しません。目指す姿が明確だからです。

さて、彼らのそうしたモチベーションは4人が勤めてくれている事業所、トヨタケ工業においても同じであることが分かってきました。仕事は目指す姿を失い責任が付きまとった瞬間に、やらされ感になることがよくあります。正直に申し上げて、会社の中に全く問題がないなんてことはあり得ません。常に社会や会社は混とんとした中にあり、課題解決をしながら時代を切り開いてきたとも言えます。彼らは自ら志願して稲武に移住し、マウンテンバイクをエンジョイしながら会社で頑張ることを決めてくれました。会社に何か問題があった時、それを誰かのせいにせず、自分たちは稲武でやりたいことがあった、だからそこに問題があれば自分たちで解決していこう。そういう前向きなスタンスが業務内でもそのまま伝わってきます。つまり、マウンテンバイクという趣味を通じてきたことが、それ以外の業務や社内、同僚たちに大きな影響を出し始めたということです。朝の通勤も自転車で疾走してくるのを町の人たちは見ています。そうしたことが町にも少しずつ自転車文化を広め、通学途中の子供たちが「お兄ちゃんみたいに乗ってみたい!」なんて言ってくれるようになったら、将来にわたって稲武はマウンテンバイクの聖地となり得るような、持続的な成長があるでしょう。その歯車が回ってきたと言えます。

プロジェクトが先日、NHKの取材されました。そして前回のコラムを執筆した遠藤君のチャレンジが、東海9県の朝のニュースで放送される事に。番組の中ではI.B.P.のツアーガイドと就業の組み合わせが、広がる社内兼業として紹介されました。ワークライフバランスの「ワーク」がトヨタケ工業での事業所業務、「ライフ」が事業化を目指すマウンテンバイクのツアーガイド事業。これによって仕事と生活の調和がなされているという表現でした。なるほど、こう考えると戸田先生が言われていた「仕事と趣味が渾然一体となった働き方」という話と合います。

つまり「週3日×2日のパラレルワーク」とは持続的に続く事業の仕組みとして考えていたのですが、働く側から考えるとそういうライフスタイルの提案だったということです。そしてなぜ、企業側がこれを推すことになるのか? 番組では「多様な人材を獲得できる効率的な方法」とお話ししましたが、それ以外にも事業所での3日には大きなミッションがあります。多くの企業で求められている新しい価値やサービスの創出。それをビジネスとしてつなげていく際、企画系の業務は会社のなかで週5日間、じっとこもって考えていては良いアイデアは出てきません。かといって、特に中小企業では業務中に社外に出ることにも限りがあります。そこで、この独自採算の週2日のツアーガイドの時間を利用して、様々なニーズや刺激を受けた人が、アイデアや仕事の仕方を社内に持ち込み、新商品やサービスを生み出すということを期待しています。

冒頭にお伝えした4人は、覚悟と希望に燃えています。自分の環境は自分でよくしていくんだ。だから会社にも地域にも問題があったら一緒に解決していこう。そういう前向きなスタンスが直接的には会社に、そして徐々に地域にも広がっていくことでしょう。地域リーダーが面白いことを加速度的に価値化をしていき、より仲間が増えるというサイクルが生まれていく。これは助成をうけた3年間で示してきたロジックモデル、その実現に繋がるのと考えます。ワークライフのワークとしての事業所業務だけをしているとどうしてもやらされ感になる。そしてやらされ感でやる仕事は、顧客の期待以上の成果が出ない。つまり、それなりのお金しかもらえないということです。そうした事にならないよう、フィールド活用の事業化を目指すライフの時間はとても大切なのだと思います。

ここ数年、働き方改革や副業兼業元年と言われ続け、2015年から取り組んできたこの「週3日×2日のパラレルワーク」のプロジェクト。平成から令和になり、ようやく時代が追い付いてきてくれました。豊田市から得た3年間の助成でこのようなスタートができ、僕らは確実な成果に向けて歩み始めました。この4月からは完全な自主事業となります。収入がなければすべて持ち出し、それはつまり続かない仕組みであることを意味しています。4月からといいつつ、まだ事業化が成されていませんが4人が新しい環境に慣れ、ワークとライフがバランスよくスタートできる日をどうぞ暖かく見守っていただければと思います。そして、極上のトレイルをマウンテンバイクで走り回れる日をお楽しみに! トレイル整備の日程も公開されました。ぜひ、一緒に新しい価値が生まれる現場に参加しませんか?

2019年

最近の報道履歴

4月22日

5月3日

5月21日

 

 NHK総合「おはよう東海」

朝日新聞「週3会社 週2は自然ガイド 働き方魅力 新卒者入社」

東海ラジオ「ひるカフェ」でOPEN INABUの取り組みが紹介

 

筆者プロフィール

横田 幸史朗

 自動車用シートカバーメーカー「トヨタケ工業 株式会社」社長

 地域の新規定住者受け入れ支援団体「OPEN INABU実行委員会」代表

 豊田市 市民発!ミライ・チャレンジプロジェクト補助対象事業「INABU BASE PROJECT」主催

1975年生まれ。動物占いは「気分屋の猿」、趣味は読書とサイクリング。南山高校男子部在学中にアメリカアリゾナ州フェニックスに1年間交換留学。卒業後、青山学院大学法学部へ。EU法の域外適用について学ぶ。卒業後ブラザー工業株式会社入社。情報企画部にてグローバルのITインフラ構築に携わる。後、欧州統括会社のBrother International EUROPEに出向、現地の経営企画部にて欧州17か国の月次決算システムの導入とユーザー(現地社長)サポートを行う。6年間半の任期後、2010年に帰国。帰国後名古屋商科大学にてGlobal MBAの履修を始める。一年間ブラザー工業本社のIT企画にて欧州で得た経験をアジアで展開するプロジェクトを立ち上げる。2011年2月末ブラザー工業退職、4月より実家がオーナーであるトヨタケ工業株式会社入社。2013年9月にMBA課程修了。2015年1月より社長就任。OPEN INABU事業や新規顧客の獲得、会社の近代化などを行いつつ、事業承継後の持続的可能な企業となるよう、地域と一体となった経営を進める。2016年には「遊ぶ」「働く」を考えて実践するINABU BASE PROJECTが、豊田市主催する補助事業の対象となり「稲武で始まる働き方革命」を掲げ、ミッションの成立を目指す。

 

1999 〜 2003 ブラザー工業株式会社勤務

2003 〜 2010 Brother International EUROPE,LTD出向

2010 〜 2011 ブラザー工業株式会社勤務

2011 〜          トヨタケ工業株式会社 (2015年1月~社長就任)

筆者の自転車遍歴と海外渡航歴

・中学生の時にMTB NISHIKI を通学用に買ってもらい、学校まで8キロ毎日自転車通学を始め自転車の楽しさを知る。

・高校1年の夏に友人に誘われ1か月ポートランドにホームステイ。ステイ先の家族と自転車で毎朝サイクリングに出かける。なお、ホストファーザーは後ろにポリバケツを積んでいて、路上のごみを拾いながら走っていた。

・帰国後、よりアメリカに行ってみたいと思い高校2年の時に交換留学で現地の高校へ1年間通う。ホームステイ先がヒッピー流れの家族で、ワーゲンのバンでキャンプに行くなど、アウトドアライフを覚える。

・大学に入る際にPEUGEOTのMTBを購入。大学ではサイクリングクラブに所属し、関東の山々を走ったり、夏は毎年1か月北海道にキャンプを積んで走るなどする。

・1998年夏卒業旅行でユーラシア大陸陸路で横断する。神戸、天津、北京、モンゴル、ロシア、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークまで旅をする。

・卒業後、新入社員のボーナスでひとめぼれしたBrodieのダウンヒルマウンテンバイクを購入。富士見パノラマなどのダウンヒルコースで遊んだり、地元の里山でマウンテンバイクライドを楽しむ。

・2001年、勤め先の同僚に誘われ、クリティカルマス名古屋に顔を出すようになる。最終土曜日の午後自然発生的に集まった人たちで名古屋駅や栄などの市街地中心にて、公道における自転車の市民権を主張。

・2002年、友人を頼ってのオランダ渡航の際、ベルギーでもクリティカルマスをやっていると聞いて、ブリュッセルで開催されていた自転車でクリティカルマスに参加。

・2003年、勤め先の海外拠点のあるイギリスへ出向。現地ブランドであるORANGEのマウンテンバイクを購入し、トレイルライドを楽しむ。

・2011年、実家が経営するトヨタケ工業株式会社へ入社。名古屋と稲武の事業所を行き来する生活に。

・2015年には社長として同社を預かることに。同時にロードバイク、マウンテンバイクでの稲武フィールド探索がはじまる。

トヨタケ工業株式会社ロゴ オープンイナブロゴ
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稲武で「遊ぶ」「働く」を考えて実践する「INABU BASE PROJECT」

トヨタケ工業株式会社   OPEN INABU  NPO法人 チャリンコ活用推進研究会

 豊田市 市民発!ミライ☆チャレンジプロジェクト採択事業

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